がんのピンポイント放射線治療の最先端

早期肺がん、肝臓がん、前立腺がん、肺転移、肝転移に対するピンポイント放射線治療、正式には体幹部定位放射線治療、を解説しています。2018年12月　大船中央病院　市民公開講座　放射線治療センター　鶴貝　雄一郎

体幹部定位放射線治療の特長
第一の特長は、治療部位のがんを死滅させる力が高いことです。早期がんであれば、治癒が望めます。肺転移、肝転移が少数（例えば3個以内）の患者さんの中には、薬物療法に体幹部定位放射線治療を追加することで、生存期間を延ばせる患者さんがいることが複数の研究でわかってきています。
第二の特長は、治療に伴う痛みがないことです。熱くもだるくもなりません。
第三の特長は、治療期間が1日1回30分を計5日間と短いことです。通院治療も可能で、仕事や家事、介護と両立することができます。

早期肺がん：体幹部定位放射線治療は身体的に手術に耐えられない患者さんに対する標準治療（＝第一に勧められるべき治療）と位置付けられています。リンパ節・他臓器に転移がない、直径5㎝以内の原発性肺がんが適応になります。重症の合併症も少なく、体力のない高齢者にも行うことが可能です。良好な治療成績を収めているため、近年では、身体的に手術はなんとか可能ではあるけれど、術中術後の合併症が起こる可能性が比較的高い患者さんに対しても体幹部定位放射線治療が提示される機会も多くなってきました。世界中の医師の間でも、このような患者さんに対する適切な治療方針について議論になっています。

肝臓がん：治療部位のがんを死滅させる力に関して、体幹部定位放射線治療は手術、ラジオ波焼灼療法（RFA）に匹敵する高い治療効果が報告されています。手術やRFAが治療しにくい場所に肝臓がんがある場合、体幹部定位放射線治療が非常に有用です。肝臓がんに対する体幹部定位放射線治療を日本で行っている病院は非常に限られているうえに、治療経験数にもかなりの偏りがあるのが実状です。他の癌腫でもいえることですが、豊富な治療経験を持つ病院で行った方が治療成績は良好と言われています。

前立腺がん：海外の治療ガイドラインにおいて、体幹部定位放射線治療は早期の前立腺がんに対する有用な治療選択肢の１つとして、手術、小線源治療、外部放射線治療（強度変調放射線治療）と並んで紹介されています。近年、より進行した前立腺がんに対しても体幹部定位放射線治療を行う施設が海外を中心に増加していますが、10年を超える長期成績はまだ未成熟です。治療法を決める際には、がんの進行度に加えて、年齢や身体的・社会的状態、価値観も考慮して、患者さんと泌尿器科医、放射線治療医とで相談する”Shared decision making”が普及しつつあります。各治療法は、YouTube” 前立腺がん　～どの治療法を選べばいいですか～”　 でも解説しています。前立腺がん　～どの治療法を選べばいいですか～　大船中央病院　鶴貝雄一郎

肺転移・肝転移：転移病巣の個数が少ない場合、薬物療法に体幹部定位放射線治療を追加することで生存期間が延びる患者さんが増えることが、複数の研究（無作為化比較試験）で報告されています。一方で、病巣の数が多い場合は体幹部定位放射線治療を含めた局所治療を行っても生存期間が延びることは期待できず、むしろ治療による合併症が起きる可能性もあるため、どのような患者さんに体幹部定位放射線治療を行うかが重要になります。日本の保険適応上、①肺転移・肝転移の個数が3個以内、②他臓器に病巣がない、の2点ともに兼ねていることが必須条件です。

体幹部定位放射線治療についてのさらに詳しい解説は、
大船中央病院　放射線治療センターサイトhttps://www.ofunachuohp.net/rt/
早期肺がん　https://www.ofunachuohp.net/rt/treatm...
肝臓がん　https://www.ofunachuohp.net/rt/treatm...
前立腺がん　https://www.ofunachuohp.net/rt/treatm...
肺転移・肝転移　https://www.ofunachuohp.net/rt/treatm...
治療実績　https://www.ofunachuohp.net/rt/treatm...
をご参照ください。

放射線治療全般については、YouTube”わかりやすいがん放射線治療” でも解説しています。わかりやすいがん放射線治療　大船中央病院　鶴貝雄一郎